出張先の保護者とのおつきあい
出張先の生徒さんの場合、おうちにこちらが伺うわけなので、毎週顔を会わせるし、お話もします。だから、生徒のことだけじゃなく、家庭の事情なども耳に入りやすかったりします。仲良くなりやすいので、お約束事はルーズになることは少ないし、発表会などの協力も得やすいし、生徒のレッスンに対する反応もお母さんから直接聞くことができて、お母さん自体の反応も知ることができる点では安心感があります。
ただ、人間、環境に慣れる生き物です。
どんなに最初は節度があっても、だんだんなぁなぁになってくることがあります。
こちらも、
「まぁいいか。いちいち気にしててもな」
と思えるうちはいいですが、
「いくらなんでも「先生」として見てくれてないんじゃないか?」
とまで行ってしまうと、自分に自信がなくなってきます。どんなに保護者の方が好意的に接してくれても、先生はどこかで「自分は先生なんだから」と、仕事のときの自分をいつも持っておくことが大事だと思います。
個人として仲良くなるのは大いにいいことだと思うのですが、レッスンの中まで持ち込まれるようなことがあると、結局自分に負担が降りかかります。
例えば、
「夏休みは、里帰りするので、まだスケジュール決まってなかったら、先生のお休みを帰る日にあわせてもらったらありがたいんですけど。だめだったらいいんです」
なんて言われると、「う…」となります。
「日曜に振り替えしてもらっていいですか?」
「先生が自宅の生徒さんが終わった時間に、伺ってレッスン見てもらってもいいですか?」
「夏休みの間は、先生のうちに通ってもいいですか?」
「○日は家族でいないので、いつでも構いませんから先生が空いてる時間でレッスンみていただいていいですか?」
とか、
おうちに伺ってピンポーンとしても誰も出ない。やっと出てきて「あー、今本人呼んできます~」
と、10分くらい待つことに。(遊びに行ってたのかな?)
とか。
レッスンが終わると、帰り際に引き止められて、玄関先で、レッスンとは関係のない個人的なことをレッスン時間以上にずーーっとお話される。
とか。
自宅の生徒さんのお母さんとの関係とはちょっと違う感じですね。それだけ、出張の生徒さんのお母さんとは親密になりやすいのです。それはとってもありがたいことでもあります。
「もし、先生がだめって言うならそれでいいけど、ダメもとで言ってみよう」「とりあえず、言ってみるだけ言ってみて、OKだったらラッキーかな」
くらいのほんとにかる~い気持ちでの言葉なんです。だけど、先生にとっては、こういうのが精神的に一番きついです。
自分の立場と、そのときの心理的なもので、対応できるかも、なんて揺らいでしまうような要望が、先生を苦しめます。
はじめは「なんて、私って威厳がないんだろう…。若い先生(注・その当時は・笑)だと思って何でも言いやすいのかな」「補充レッスンやってあげればよかったかな、私って器が小さいのかな」なんてとずいぶん傷ついたり、凹んだりしたものでした。
ですが、これは長年のお付き合いになれば、誰の心にでも生まれる親しみからくるもので、慣れてくれば相手に気を遣わなくなるのと同じことです。
友達同士ならこういうことよくありますよね。
友達なら
「ちょっと、それはずうずうしすぎだって(笑)」っと突っ込んで終われるけど
親しみを込められたからって、こっちもそれに乗っかってまさかこんな風に返したら、絶対角が立つに決まってます(笑)若干気まずい空気を作ってしまいます。だからきついのです。
ある程度しょうがないよね・・・と思う一方で、示すときはちゃんと示すという先生としてのメリハリは必要だと思います。
これが「距離感」です。
それはまた勝手な…という要望を言われたら、やんわりとお断りします。やんわりとお断りすることが続いて、それがだんだん不毛だと思ったら、折を見て、
「他の生徒さんと同じ条件でレッスンしなければならない立場なので、お応えしたくても特別扱いになるのは避けたいので、心苦しいけどお応えできない」
ということを、穏やかな感じで、だけどはっきりと意思表示をします。
これは、かなり勇気のいることです。
レッスン後に、個人的なことばかりお話するお母さんは、先生に親しみを持って、会話を楽しみたいとか、お話好きとかなんですが、心を開いてくださってうれしいな、と思うけど、その話がレッスン時間よりも長くなってしまったらちょっと本末転倒です。こちらからお母さんの個人的なことを根堀り葉堀り聞かない、生徒であるお子さんの話題だけにとどめる。自分は、生徒の先生としてきています、という気持ちでいることかなと思います。そのくらいのことしかできないかもしれません。
個人的なことを持ち出す人は、こちらの個人的な話を聞きたがります。そりゃそうーですよね。友達だったらそうですよ。逆に、先生の方だってお母さんに興味を持って、いろいろ聞きたくなることもありますよね。でも相手は「生徒のお母さん」です。そうしたくてもできないのが先生です。
先生は、先生の顔と、個人の顔と切り替えられていても、お母さんもそうだとは限らないのです。
「ピアノレッスン」という接点で出会った関係なので、そこからぶれすぎないおつきあいをするように気を配りましょう。
他の生徒さんのことを思えば、均一でお互いに心地よい距離感をとるスキルを身につけたほうがストレスはたまりません。
ですが、生徒がやめてしまってからも時々連絡がきて、生徒のおうちに遊びに行くこともあります。そういうのは、「ピアノレッスン」が介在してないので、自分の素を出しやすいおつきあいができています。
そう。相性がよければ、退会したあとでも、遊びにきてね!って言ってもらえるくらいの関係を築ける間柄になるのが、出張の生徒さんです。
そして、出張レッスンがあるから、この仕事が続けられるという大きな心の支えにもなっているくらい大切な存在です。
だからこそ、いつも「自分はどうあるべきなのか」という気持ちで距離を上手にとっておつきあいましょう。
ここからはちょっと余談です。
例えば、私はこのコンテンツには自分の実体験を書いているため、特にものすごく配慮して書いています。できるならこのコンテンツは書きたくないくらいけっこう気が重い作業でした。 私の生徒さんじゃなくても、誰かの生徒さんが目にしたら、ちょっと気分よくないかもしれないな、と思うからです。
よく、ネットでブログやHPを持ってる先生の中には、生徒の愚痴、レッスンの苦労、などを書いていたりします。掲示板とかでも同じです。
確かに同業者として読んでて、ものすごーーーーく同感!って思うんですが、それを読んだ全世界のピアノを習っている生徒さん、その親御さんにとっては、気分はよくないと思うんです。
そういう「ぶっちゃけた本音」はネットに載せないで、メールで、またはオフラインで友達や家族に言えばいいことだと思ってます。(私はそうしてます)ピアノの先生ってこんな本音があるんだ、大変なんだな…なんて情報は別に生徒の耳や目に入れる必要なんてないんです。
私はピアノを教えている側だけど、例えば、私の先生がそういう愚痴をどこかで書いているのを見ちゃったら、やっぱり嫌です。
愚痴はどうしたって生まれるものですが、それを堂々と書くよりも、どうしたら自分のやり方がうまく伝えられるかを考えて、それが結果的に自分が不満を抱かないように仕事ができるようになれば、腐らずにこの仕事を好きだと思い続けられるのではないかなーと思います。
さらに、ブログやレッスン日記などのコンテンツで、生徒の不得意な部分を、自分の指導の仕方がよくない以外の理由で書かないようにしましょう。
書き方によっては、親のしつけのせいのようにも思えるし、同業者批判のようにも思えたりします。(同業者批判する=人前で批判する人と判断される→だから私は言わない選択をしています)
そんなつもりで書いたんじゃないことも、読む人によっては解釈はさまざまです。最悪、人間性を疑われたりすると不幸です。
「そんなことこういう場で書いてしまう先生には教わりたくありません」
というようなコメントを見たことがあります。本音を書いたら(言ったら)、正論であっても反感を買う。これはネット上では当たり前と思いましょう。
今は特に、ピアノ教室を探す媒体としてネットから情報を得る人は増えています。
ですから、これからHPやブログなどをやろうとしていらっしゃる先生、レッスン日誌なるものを書く際は、十分に気をつけましょう。あと当然ですが、生徒の個人情報についての配慮もしましょう。名前や、写真を載せることも注意してください。
自分のその発言は、とどのつまり誰に向かって話してるのと同じことなのかというところまで想定してから慎重に書きましょう。
私も常々細心の注意を払って書いています(つもりです…)
っていうか、なんか説教くさくなっちゃっていやだな(´ロ`)
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